徒然なるままに~人生三角折主義~

あくびしてる猫の口に指突っ込むときくらいの軽い気持ちで見てください。

storyでワカル言葉の由来辞典①~「面白い編」③~

※先にこちらをお読みください。

storyでワカル言葉の由来辞典①~「面白い編」①~ - 徒然なるままに~人生三角折主義~

storyでワカル言葉の由来辞典①~「面白い編」②~ - 徒然なるままに~人生三角折主義~

翌日早朝、滝つぼに浮かぶ意識不明のヨシノヤと大きな猪を見つけたのはキノコ狩りに来た老夫婦であった。彼等は村で小料理屋を営んでおり、この日の食料調達にやってきたのである。老夫婦はヨシノヤの体を滝つぼから引き上げ、夫が担いでいた籠に放り込んでからキノコ狩りを始めた。

 

この滝の近辺にはシメジともシイタケともつかないなんとも珍妙なキノコが生える。それゆえに、ある季節になると地元の住民がこぞってやってくるのだ。

 

籠がヨシノヤの体と大量のキノコでいっぱいになると二人は山を降りた。

 

それから老夫婦は村で唯一の病院にヨシノヤを置いていった。病院の主の名は膏來苑(ガオライイェン)。高校中退のモグリの医者である。この村に医者は彼一人しかいない。

眼を覚ましたヨシノヤが初めに見たのは薄汚れた白い天井だった。とっさに体を起こそうとしたが全身の痛みがそれを阻んだ。ここがどこなのか、なぜここにいるのか、何もわからなかった。

「おぉ、眼を覚ましたか。」

ふと横を見ると白衣を着た白髪の爺が立っていた。

「お前さん、自分の名前が言えるかい。」

「あぁ、俺の名前はヨシノヤ。あんたは何者だ。」

「わしの名前は來苑。この村で医者をしている。」

彼はそういう言いながらゆっくりと丸太の椅子に腰掛けた。

それから彼は、料理屋の老夫婦が滝つぼからヨシノヤを運んできたこと、滝つぼには猪が浮かんでいてそれに打たれたのではないかと話していたこと、キノコを少しわけてくれたことなどを話した。

「そうか、それは迷惑をかけたな。礼を言おう。」

「礼を言うならその夫婦に言うんだな。わしがしたことはあんたの身体に軟膏をぬったことくらいだ。ところでお前さんの体の状態なんだが……」

そう切り出した後、彼はヨシノヤの身体の具合について事細かに述べていった。大まかに言うと命に別状はないが猪が衝突したときの衝撃による脳へのダメージは大きいということであった。おそらく何らかの障害が残るだろうとも言った。

ヨシノヤは何かとてもいやな予感がした。

 

つづく