創作怪談風話 ボールペンの花子さん その1
放課後、誰もいなくなった教室で三度赤いボールペンをノックすると幽霊の花子さんが出るという。そんな噂がまことしやかに囁かれているのだ。闇ヶ丘小学校に通う吉井彩もあるときその噂を耳にした。
給食の時間、向かいの席に座る仲村恭子が彩に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、あの話、聞いた?」
「あの話って?」
「幽霊の花子さんの話。放課後に教室で赤いボールペンを三回ノックするとどこからか現れるんだって。」
この手の話が苦手な彩は眉をひそめた。
「でね、隣のクラスの康太くんが最近学校に来てないのは知ってるでしょ?それは康太くんが花子さんを呼び出してあの世に連れて行かれちゃったからなんだって…。」
恭子はトーンをくっと落とし、声色を変えて話した。
「やめてよ!もう!給食がまずくなっちゃう。」
「ごめん、ごめん。念のため、耳に入れておこうと思って。ほら、今日は彩が日直で放課後教室に残るでしょ?うっかりボールペンを3回ノックしないように、ね?」
恭子は冗談めかしてそう言った。
「大丈夫だよ。信じてないから。」
彩はそう応じたものの、内心では少し怯えていた。
<つづく>