徒然なるままに~人生三角折主義~

あくびしてる猫の口に指突っ込むときくらいの軽い気持ちで見てください。

ショート落語『パンダ』 (今週のお題「卒業」)

今週のお題「卒業」

卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう、などと歌われておりますが、私が学生だった頃は卒業式で泣いてる男なんかがおりますと「お前男のくせに泣きやがって」なんてからかわれたものです。かくいう私もからかわれたうちの一人なんですがね。

もともと泣き上戸なんてよく言われていたんですが、年取ったせいか最近余計に涙腺が緩くなりましてね、つい先日なんて夕方のニュースで流れてたパンダの交尾のシーンで泣いてしまいまして…。

「お゛っお゛ぃお゛い…お゛ぃおい。お゛ぅお゛ぅお゛ぅ…(泣きの芝居)」

「どうしてあんたはこんなもの見て涙が出るんだろうねぇ」

「ばかやろう、お前、自分らがセックスしてるところを全国に放送されてんだぞ、パンダの気持ち考えてみろ」

「パンダの気持ちって言われてもねぇ、あたしにはパンの日持ちのほうが気になるわよ」

「うまいこと言ってんじゃないよこのやろう。いいか、あのパンダ達はな、交尾映像が公開された後も動物園に来た観客に見られつづけるんだぞ。これはお前、そのへんのリベンジポルノよりもきついぞ。お゛ぅお゛ぅお゛ぅ…(泣きの芝居)」

あんた、そんなこと考えて泣いてたの。くだらないねぇ。」

「人が泣いてるのにくだらないとはなんだよ。それだけじゃないぞ、見ろよあのオスのほうのパンダ。お゛ぅお゛ぅ…」

「何よ。オスのほうがどうしたのよ」

「あのオスのほうの股間見てみろよ。あいつ明日から動物園で『ジャイアントパンダなのにアソコはミニマムサイズ』なんて言われて笑われるんだぞ。お゛ぅお゛ぅおぅ…」

「考えすぎよ。そんなこと考えてるのあんただけだから」

うるせぇよ、ばかやろう。それだけじゃねぇよ、見てみろ、あのメスのパンダ」

「メスのパンダがどうしたっていうのよ」

「あのメスのパンダもう歳いってて乳に張りがなくなってるだろ、明日から動物園で『これが本当のたれパンダ』とか言って笑われるんだぜ。お゛ぅお゛ぅお゛ぅ…」

「誰も言わないわよ、そんなこと」

「いやもう言われてんのかもしれねぇよ、ストレスでほらあんなに白髪が生えちまって。お゛ぅお゛ぅ…」

「あれは元からでしょ、パンダなんだから」

「目の周りも、あんなにクマが出来てるよ。お゛ぅお゛ぅ…。」

「だから元からだって、パンダはそういう模様なの!」

「お、待てよ、パンダにクマができる、これは上手い洒落になりそうだぞ」

「考えなくていいから!」

「えぇと、パンダにクマが…、えぇクマがパンダに…あー…お前クマとパンダどっちが好きだ?」

「思いつかなかったからってテキトーなこと言って…」

「いいから答えろよ、クマとパンダどっちが好きなんだよ」

「あたしはクマのほうが好きだね、笹食ってるようなヤワなやつは嫌いさ」

「なんだとお前クマのほうが良いだって、このやろう、絶対パンダの方がいいだろう、丸っこくて可愛らしいじゃねぇか」

「あたしはなんと言われようとクマのほうが好きさね」

「なんだとこの売国奴!日本より中国が好きってことかい!」

「そうは言ってないだろう!ただパンダよりクマが好きだって言ってんの」

「…お前引きさがらない気だな、こっちも譲らねぇぞこのやろう、白黒はっきりつけようじゃねぇか、あー…、パンダだけに」

お後がよろしいようで。